発達障害者の妻と、他の障害者の妻との違い

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※発達障害を抱える人には男性が多いため、この記事では、
発達障害を抱える側を「夫」とし、その配偶者を「妻」側としていますが、
妻と夫が逆転する場合もあります。その場合は置き換えてお読みください。

「障害」と一言で言っても、本当にいろんな障害が存在していて、
どんな障害を抱える方にもそれぞれの大変さがあって、
またその家族にも同じようにそれぞれの大変さがあって、
その妻となった人にもそれぞれの大変さがありますよね。

私には、発達障害を持つ夫がいます。

夫と暮らしていく中で、カサンドラ症候群という状態になり、
「発達障害を抱える人の妻となった人の大変さ」だけ
他の障害を抱える方の妻の大変さとは決定的に違う点がある
ということに気づきました。

これを読んでいただくことにより、
あなたが「なぜこんなに辛いのだろう?」と悩んだ時に
自分を責める思考へ向かうことを防ぎたいです。
あなたは悪くない。あなたの努力不足や力不足ではないのです。

まず、発達障害とその他の障害の違い

・見た目ではわからない

見た目だけでは、わからないですよね。
外見ですぐに「あ、指が1本少ないですね」等とわかる障害に比べて、
気づかれにくい障害です。

・特性の出方が多種多様すぎる

いくつもの特性が合わさっています。
100人いたら、パターンは100通り。
「Aパターンの子にはA’の対策を!」と、一筋縄ではいきません。

・困り感が数値で測れない

「視力0.3です」というように、数値で測ることができません。
「IQ60です」と言われただけではどんな特性を持っているかがわからない。
それぞれの知能検査の結果は数値で表せたとしても、
それが組み合わさった時の困り感は数値では表せません。

・個々の感じ方にも差が大きい

同じ程度の特性を持っていたとしても、
「すんごい困ってる」「あまり気にならない」「対策できてるし全然平気」
と、本人の体感にも差があり、
それによっても診断が左右される場合があります。
「困っていない人には診断がつかない」のです。

・当事者の数に対して専門家の数が少ない

「発達障害専門」の病院は、電話予約を取るのにも苦労します。
半年待ちなんて当たり前の世界。

とにかく、足りないです。

・時代的な背景もあり二次障害を防げなかった世代の苦悩

発達障害というものがまた世にあまり認知されていなかった時代は
「なぜ普通にできないの!」「なんでこんなことで失敗するの!」
と叱られて育つ人も多かった。

みんな、「普通以上」を目指していた。

二次障害が出やすい環境であったのは、間違いないと思います。

・支える家族への支援も足りない

カサンドラ症候群で苦しむ人がとても増えています。
でも、その人たちはどこを頼れば良いのでしょうか。
支援がとても必要な状態なのに、支援先が全く足りていません。

それを抱える人の、妻の辛さ

結婚できている時点で「外モードが上手な人」である可能性が高いです。
(カサンドラ症候群は配偶者に限った話ではないですが、結婚前の恋人関係や職場カサンドラさんも含め、深く接する仲になっているという点で、同じことが言えると思います。)

「外モードって何?」という方は、こちらをご覧ください。
私の夫は、会社ではバリバリの外モード。
会社で知り合った私にも外モード全開で近づいてきたのでした。

前置きとして、「外モード」は悪いことではないということを述べておきます。
「その場に適応してきた」ということであり、
当事者さんが生きていくうえでの必要なスキルだと私は考えています。

ただ、その「外モードが上手にできてきた人」の妻になると、
他の障害にはない、こんな大変なことが起こります。

1.本人のプライドが高い

外モードによって地位が築き上げることができた人は、
「自分が発達障害である」という自覚をなかなか持てません。

すると、うまくいかないことの原因を
自分には問題がない/相手のせいだと認識する場合があります。

2.受け入れるのが難しい

あくまで「外モード」の彼と結婚したわけで、
あなたが好きになったのは「外モード」の彼なわけです。

上の記事に書いたとおり、「化けの皮が剝がれた!」とか
「メイクを落としたらすっぴんが別人だった!」とか、
「実はすごく腹黒い性格だった!」とか、そういうレベルではなくて、
それができないと生きられなかったというレベル
での適応能力なのです。

外モードしか知らずに結婚したあなたは、これを受け入れるのが難しい。
難しいどころか、「私はなんて見る目がないのだろう」と責める人もいる。
でも、責める必要なんてないのです。

何度も言うように、
彼の適応能力は生き死にに関わるほどの重大なシステムであるため、
現に周りに見破られずに仕事ができている。結婚もできている。
見破ることができないあなたに問題があるのではなくて、
彼の適応能力がそれだけすごすぎたということなのです。
だって、彼はそれをしなければ生きることができないレベルにいたのです。

なので、あなたの「見る目がない」なんてことはないし、
外モードを彼自身だと思って結婚したあなたが
逆のモードを受け入れられないのは、当然のことなのです。

3.単体のASDだけの人は少ない

外モードが上手で、それを無意識にやっているということは、
「ありのままの自分ではだめだ」
という意識を持って生きてきた可能性が高い。

・・ということはどういうことかというと、

「二次障害を併発している可能性が高い」ということ。

不安障害、うつ、神経症、適応障害、統合失調症、双極性障害、
パーソナリティー障害(境界性、強迫性、自己愛性など・・・)

ほぼ全員、何かを併せ持っています。気づいていなくても、持っています。

正しい療育を受けて素直にまっすぐ運よく育ったASDさんには
「僕はこういう部分が苦手で、ASDの診断がついているんだ。
 会社では外モードで適応しているけど、実はこういう特性があるんだ。」
と言える人もいるかもしれない。

でも、今現在大人になって苦しんでいる世代の中に、
これができる人がどの程度いるのでしょうか。
きっと、とても少ないと思います。

二次障害を併発した状態だととてもとても厄介で、
「ASDについて」だけではなく他についても学ばなければなりません。

これ、とても大変です。
素人にここまで求めるの!?と気が狂いそうになるレベルで大変です。

今悩んでいるあなたへ

ここまでに述べたとおり、
あなたはとても大変な問題に向き合っています。
マニュアルがない、正解がない世界で。夫を頼れずに一人で。
とてもがんばっています。

なんでこんなに苦しいんだろう?
自分の能力が足りないせいなのか?
努力が足りない?力不足?私は何が足りないの?

・・・あなたがそういう悩みに頭を抱えることのないように、
大変な理由を具体的に掘り下げてみました。

まずは自分のことを大事にしてほしいです。

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